トレンド相場に強い、オーソドックスなEAという印象
ということで、もはやいつぶりか分かりませんが、FX-ONで販売されているEAのレビューなどを行ってみたいと思います。今回レビュー対象にするのは、SuperNOVA ver2.0です。
既に1年半のフォワードテスト期間を経過していますが、最近特に好調が目立っており、販売好調になってきているEAです。24,800円となかなかいいお値段ですが、それに見合う成績を今後期待できるのか、という観点で見ていきたいと思います。
どんなEA?
作者の販売ページに記載されているEA情報の中で、ポイントとなりそうなところを引用してみました。
○複数足を監視してトレンド方向を確認し、タイミングを計ってエントリーします。決済には独自の疑似トレーリングストップ機能により最大限利益を伸ばして利確します。
○取引可能時間は日本時間20時~10時です。
○両建てなし、ナンピン・マーチンゲール等のロジックは使用していません。
一点目は、非常にオーソドックスな考え方だと思います。私が無料EA研究所で公開しているAll-Trend-Entryもこの「複数足でトレンド方向を確認する」という考え方に則っており、私のトレードスタイルに似た考え方で共感が持てます。三点目の「ナンピン・マーチンなし」というところも重要ですね。
後は二点目。NY時間を中心にトレードを行うということでしょうか。朝の薄商いの時間までトレード時間に含めているというのが少し理由を知りたい気もしますが、その点についても別途考察を深めていくことにしましょう。
とりあえず、ここから得られる情報としては、「トレンド相場に強い」という印象を受けますが、それが本当にあっているかも検証してくことにします。
検証ポイント① 極度なカーブフィッティングをしていないか?
パラメータによる過度なカーブフィッティングをしていないか、ということを検証してみようかと思いますが、実はこのEA、設定できる項目が余りありません。効いてきそうなのはストップロス値で、153Pipsというのがデフォルト値として設定されています。
この値を123~183くらいまで動かして確認してみましたが、まあ、ほとんど変わらない結果になっていました。そもそもこのEA、153Pipsとそれなりに発生しそうな値なのに、過去10年のバックテストでストップロスにかかったのが15回(1.18%)と非常に少ないので、ここのパラメータを変えても特に変わらないんですね。まあ、1万通貨運用で1万5千円飛ぶ確率が1%程度なら、許容できるくらいの値な気もしますし、良いんじゃないでしょうか。
ということで、パラメータ調整により最適化する余地はあまりないような気がします。それでこの成績は立派・・・?というのは早計。パラメータの最適化余地がないのに好成績、とはこれだけでは言い切れないのです。詳しくは以下の記事を見てみてください。
参考記事:「パラメータの多いEAは危険」ということを盲信することの危険
ということで、もうちょっと考察を深めていってみましょう。
検証ポイント② バックテストとフォワードテストとの乖離はないか?
幸いなことに、このEAは結構フォワードテスト期間が長いです。1年半のサンプルがあるので、基本データを比較してみることにしましょう。
評価項目 | バックテスト | フォワードテスト |
勝率 | 75.43% | 69.89% |
平均利益 | 65.19ドル | 8,022円 |
平均損失 | -103.14ドル | -14,603円 |
平均利益÷平均損失 | 63.21% | 54.93% |
PF | 1.94 | 1.27 |
平均保有時間 | 5時間26分38秒 | 5時間51分36秒 |
勝率がバックテストと比べて若干悪いように見えますね。平均利益・平均損失はドルと円の比較なのでやりにくいですが、平均損失がバックテストよりも若干悪くなっているようです。総じてバックテストよりも少し下振れした成績になっていて、結果としてPFが落ち込み気味なのかなという感じです。
勝率については、余り気にしなくていいと思います。というのも、このEAはおそらくトレンド相場に強いので、計測した時期によって差が結構ありそうな気がしますので。この辺は参考にしていく程度で良いでしょう。平均損失が若干上振れしているというのは少し気になるポイントではありますが、これも同様に、まだサンプル数不足による揺れと考えてもいい範囲なのかなと思います。継続して見ていきましょう。
平均のポジション保有時間は、バックテスト・フォワードテストともにおおよそ6時間弱になるようです。比較的早期決着してくれるので、精神面には優しいEAといえるかも知れませんね。ちなみにCDFはこんな感じです。傾向はそれほど違わないですね。
ちょっと気になるのが・・・フォワードテストとバックテストで時期が被っているところのエントリーポイントがかなりずれているところ。動作開始したポイントでかなり成績のズレが出てきそうな気がします。まあ、個人的には良い方向にも悪い方向にも出ると思うので、マクロで見たらあまり気にしなくても良いんじゃないかなと思いますが、フォワードとの成績がずれる、というのを気にされる方であればあまり推奨できないような気がします。
検証ポイント③ 年ごとの成績はどうなっているか?
ということで、EAの特徴通りに成績が推移しているか、というのを、月ごとのグラフにして見てみました。これは、FX-ONで公開されているバックテストとフォワードテストを、ピボットグラフを使ってこねくり回してみた結果です。
参考記事:「ピボットテーブル」で簡単にトレード日誌の集計をしよう!(ピボットグラフ編)
私の見立てが間違っていなければ、おそらくトレンドのはっきりとついている2009年(リーマンショック)や、2013年~2014年(アベノミクス)、2016年(トランプ上げ相場)あたりは調子が良く、2012年(民主党政権時代)とか2015年(年間通しての超挟レンジ相場)とかはあまり調子が良くないのではないかな、と思いますが、果たして・・・?
バックテスト結果
※2016年は3月までの成績。
フォワードテスト結果
※2015年は11月からの成績、2017年は4月までの成績。
どうでしょう?やはり、見立て通り、リーマンショックが爆裂した2008年10月以降の成績が半端なく良いですね。また、2013~2014年、2016年も予想通り好調な成績で終わっていることが確認できます。対して、2015年は年間通しての成績がほぼゼロです。(トレンドフォロー型のEAであれだけ厳しい相場をほぼゼロで乗り切れているというのは、個人的にはかなり優秀だと思いますので、これがダメと言っているわけではありません)
ということで、おおよそ基本ポリシーに合った損益グラフを描いており、妙なカーブフィッティングをしている可能性は低いのではないかなと思います。
【結論】非常に優秀なEAである可能性は高いが、目先の成績は厳しいかもしれない・・・
ということで、今回はSuperNOVA ver2.0の検証を行ってみました。おおよそ、今後の成績にも期待が持てるEAなのではないかなという印象を受けました。
しかしながら、今は地政学的にもかなり不安定な相場が続いており、思惑が入り乱れるようなレンジ相場が続いていく可能性が高いです。よって、このEAにとってはあまりよろしくない相場環境が続くことになるんじゃないかなと見立てています。
ただ、正直なトレンド相場に戻ったときには再び活躍してくれると思いますし、ポートフォリオの一つとして持っておいても良いのではないかな、と思いました。参考にしていただければと思います。
ということで、次回は時間帯別やロング/ショート別の成績集計とか、もうちょっと別の角度でもこのEAの検証をしてみたいと思います。
以上です。